無邪気すぎて手の出せないキッド君

「あ、キッドくん!アイス!アイス売ってるよ!」
「このくそ寒ぃのになんでアイスなんて食いたくなるんだよ」
「冬と言えばアイスじゃん!おじさんアイスひとつ!キッドくんは?」
「いらねぇ」
まいどありー、
「わー、つめたーい!」
「(震えてんじゃねーか。馬鹿か?)」
「キッドくん今バカて思ったでしょ」
「あー思ってねぇ思ってねぇ」
「嘘だぁ!うーさむっ」
「だったらアイスなんて買うなよ」
「なにいってるのかな!冬のこたつで食べるアイスなんて最高じゃん!」
「ここは外だ馬鹿野郎」
「こたつがわりがあるもん(ぎゅ!)」
「(うわ、なにこいつ意味わかんねぇなんでこんなに手ぇ小さいんだよ指とか超細ぇ折れちまいそうじゃねぇかヤバすぎんだろ)」
「(ぇ、無反応?もしかして起こってる?ヤバい?)き、キッドくんごめん?」
「なっ、い、意味わかんねぇ謝ってんじゃねぇ!」
「わっ!?」
「・・・!?」
「つめた、キッドくんが急に暴れるからアイス付いちゃったよー」
「(クソ!なんで狙いすましたかのように口の回りにアイスが付くんだよ!なんでバニラアイスなんだよ!)」
「もーキッドくんのせいだからね」
「おいふざけんなよテメェマジで無自覚か畜生いっぺんヤらせろコラ」











少女マンガみたいなことを平気でしちゃうキッド君


「ん、にー!」

ぐっ!と腕を伸ばしても一番上まで届かない。むしろ半分くらいまでしか届かない。
やけくそになってびょん!と飛んだら白い筋が黒板につくだけだった。

「何やってんだ?」
「あ、ユースタス」

ガラッと教室の戸口を空けて現れた柄の悪い男。
真っ赤な髪がトレードマークのユースタス・キッド。今日の日直だ。

「黒板消しに決まってんじゃん」
「大変だな」
「そうですね!!」

お前が何もしないからだろ!とは流石に口が裂けてもいえない。
この不良、巷じゃ女子供にも容赦しないらしい。
小学生からの付き合いがあるとはいえ、こいつが私を殴らない保証もないのだ。

「おい貸せ」
「え?」

ふっと背後に出来た大きな影。
何が起きたかわからないまま掌の黒板けしが奪われる。
思わず見上げたキットの顔。ううーん。かっこいい、間違えた、でかい。
キッドは私の視線なんて気にもせず、その上悠々と黒板をきれいにし始めていた。いいなぁ高身長。長いなぁ腕。

「あ、ありがと、ユースタス」
「余所余所しいな」
「だって・・・」

キッド、なんて呼べない。
呼んだらあの顔の怖い不良軍団の仲間入りになってしまいそうだから。なんちゃって。本当は違うよ、バカ。

「キッドって呼べよ」
「やだよバーカ」
「うぜぇ」

表情は口調と裏腹に、幼い子供みたいににやっと笑う。
キッドの笑顔は大体子供っぽい。でも、それは昔と一緒で安心する。

「終わったぞ」
「さんきゅ」
「帰るか」
「ん、ばいばい」
「おいちび」

黒板けしを置いて戸口に向かっていたキッド。
私はちびだと!と勢いつけて振り返れば、腰を屈めたキッドの顔がすぐ目の前にあった。
私とキッドの身長差はすごい。私はキッドの胸より下くらいしかないのだから。キッドは結構腰を折っていた。

「一緒に帰るに決まってんだろ、バカ」

ぐるっと人の首に勝手にマフラーを巻いてくる。赤いマフラー。キッドの香水のにおいがした。
教室でマフラー巻かすなよ、熱いだろ、顔。







彼ジャー

「寒い!」
「そりゃあ半袖はさぶいだろ。馬鹿か?」
「キッドくん酷いです。ジャージを忘れた女の子に対してバカって」
「馬鹿だなぁお前」
「二回言われちゃったよ」

うううさむい、と私は両手で方や腕をごしごし寒風摩擦する。
でもきんきんに冷えた体育館の空気に勝てるはずもなく、私は一人白い息を吐いてがちがちと震えてしまうのだ。

「さささささむい、キッドくんくっついていいですか?」
「ふざけんな触ったら殺す」
「つっめた!なにそれひどすぎですよ!」
「だってお前手ぇ冷てぇもん」

おいおいいかつい男がもんて。
でも私はそんなツッコミをする余裕もない。寒い。寒い。
せめて隣のクラスと合同だったら愛しいベボくんが居たのに。ああ、あの毛皮にぎゅってしたい。

「もうやだ寒いもうサボります教室帰りますキッドくん先生に言っといてください」
「お前日数やばいんじゃ」
「そうだったよ!」

やっべー体育もう落とせないんだった。これは死を覚悟するしかない。

「キッドくん。私はもう駄目みたいです」
「安心しろ、骨は拾ってやる」
「キッドくんやさしい・・・!!」

キラーあたりから飛んでくる哀れみの視線に込められた意味がわからない。
もしかして私寒すぎて正常な判断できてない?やばい?
そんな感じでがたがた震えてたら体育館にホイッスルが響く。
バスケの試合が終わったらしい。次はキッドくんのチームだ。

「っしゃ、行くぜキラー!」
「わかってる」
「おいちび」
「わぶっ!?」

投げて寄越されたそれで視界が黒く染まる。
謎の布地に溺れた私は何とか顔を出せば、半袖姿でにやりと笑うキッドくんと目が合った。

「預かってろ」
「キッドくん・・・(きゅん)」

そうして不良生徒たちを引き連れてコートに入っていくキッドくんの後姿は白い体操服が眩しい背中でした。
ちなみにジャージはキッドくんの熱がこもっててすごくあったかかったです。ていうか袖超余るし丈がワンピース状態なんですけど。あったかいからいいけど(笑)

「・・・締まらねぇなぁ」
「え、なにトラファルガーくん。流石に私がぼいんでもキッドくんの胸囲には負けてるんですが」
「おいお前全国のAカップに謝れ。AA屋」
「Aくらいあるもん!」