バージルが目覚めない。
常ならば、どんなに惨い責苦を与えられたとしても、名を呼べば目を開けて答えてくれていたものを。

このまま目覚めなかったら?
もう、、と名を呼んでくれることも、その優しい目で見つめてくれることも無くなってしまったら?
このまま…

悪い予感というものは、一度頭に取り付くとなかなか離れてはいかないものだ。
不安が胸の内を黒く塗り潰す。
(ああ、誰か)
しかし縋るべき神の手さえも届かぬこの奈落の底では、どんな祈りも無意味だ。
ただ心に積もった穢濁のような不安だけが身体を支配していた。

首にかかった銀の鎖、これがいっそ自分の首を断ち切ってくれたら。