バージルは口も利かずにただ歩いていく。
わたしはそれにただついて行くだけ。
その距離は5歩ぶんくらい。
近いようだけれども、随分とそれが遠く感じる。
この塔に来る前は、彼との距離は3歩くらいだった。
たった2歩だけなのに、バージルがずっと遠く見える。
まるで見えない線が引かれているようだった。
それを踏み越えて彼に近付く事はしてはいけない。
その線を越えて二人が近付くのは、バージルが望んだ時だけだ。
そして、彼はきっと、もう二度と望まないだろう。
がしたことは自己満足のお節介で、バージルを酷く怒らせてしまった。
きっと、もう振り向かない。
覚悟したと思っていたが、まだ心の奥に諦めきれない自分が居たことに気付いて、すこしだけ泣きたくなった。
距離は一定、想いは不定
は何も言わずについて来る。
振り向いて彼女の顔は目に入れば酷くけなすような言葉を言ってしまいそうで、バージルは振り向くことすらしなかった。
少しでも優しい素振りなど見せてしまえば、はまた余計な勘違いをして、愚かだとしか言いようのないお節介を働こうとするだろう。
そんな茶番に付き合うのは真っ平だ。
死にたがりを止める気はないが、事態を引っ掻き回されるのは避けたい。
ふと、の足音が普段より遠いことに気付いた。
少しだけ歩みを遅くしてみたが、はそれに合わせて一定の距離をとるように歩いてくる。
まるで、そこに線でも引かれているかのように。
いや、実際引かれているのだろう。
そして、その境界線を引いているのは間違い無く自分だった。
近付くな、と。
ちら、とこの塔に来る前のことが頭をよぎった。
あの時もは後ろをついて来るばかりだったが、小さな足音は今よりずっと近かった気がする。
胸を引っ掻かれるような気分になって、どうしてそんな気分になるのか、その理由を考えた。
しかし適当な答えは見つからないままで、バージルは歩みを速めた。
(なぜ、)