バージルは一体何のつもりでわたしの同行を許したのだろう。
たまにそんなことを考える。
だからといって、その理由を面と向かって尋ねる事なんてできない。
彼はきっと、鬱陶しい、と眉根を寄せてわたしに帰れと命じるだろう。
全ての決定権は彼の手中にあって、それを拒否する権限などには無いのだから。
夕焼けが目に痛いようだった。
バージルが何を考えて、何を目指しているのかなんて到底わからない。
この黒く禍々しい塔で何が始まろうとしているのかすら、考えもつかないのだ。
頂上から地上を見下ろす彼の表情はどこか重い。
だが、彼の道はようやく始まったのだろう。今まで自分が足止めしていたであろう、その道を歩み始めている。
それがちゃんと未来に続くものだといい。
はぼんやりとバージルの横顔を見つめた。
銀色である筈の髪が夕焼けを映して、輝くばかりの黄金色に見える。
悪魔というのは、きっと目を背けたくなるほど醜いか、息をのむほど美しいかのどちらかしか無いのだろう。
そして、バージルは後者だ。
だからこんなにも目が離せない。
そう、美しいから離れられないのだ。
それ以外の理由は、全て昏い胸の底に沈めてしまえばいい。
(だってあまりにも悲しすぎる)
(どうしたって手に入らないものを追っているのだから)
バージルは地上から視線を上げて、目を閉じた。
あの斬るような視線が隠れているという、それだけで感じる威圧感が全く違う。
(あの目がわたしを見て緩む日が訪れればいいのに)
が心の中で溜息をつくと、ばち、と音のしそうな勢いでバージルの目が開いた。
蒼い目がこちらを向いて、思わず後退ってしまう。
「、来い」
呼ぶ声に、後退る足が止まった。
「来い」
2度目の命で、足がバージルへと向かう。
バージルの前までゆっくりと歩いて、立ち止まる。
「顔を上げろ」
顎に手をかけられ、無理に顔を上げさせられた。
は特に抵抗もせず、次の命を待った。
「…!」
降ってきたのはいつもの理不尽な要求とは程遠いものだった。
唇に落ちたその温もりは、確かめる前にまた唐突に離れて行った。
バージルは何事もなかったかのように、無表情に地上を見下ろしている。
「なぜ」
俯き、小さく聞いた言葉は空気に混じって溶けた。
返事など期待していなかったが、言わずにはいられなかった。
なぜ、どうして。
「戯れだ」
夕暮れに染まった横顔からは、なんの感情も読み取れはしなかった。
まさか気が付かないとでも?
(お前の気持ちなど、最初から、)