利己的な条件


後ろをついてくるの歩みは遅い。
だからといって足を止めて待つ気はなかった。
足手纏いは必要ない。ましてそれが人間であれば尚更だ。


「…はあっ」


ほとんど小走りにも近い速さで何時間も足を動かし続けることは、人間の身体には難しいことなのだろう。
の息は上がってしまい、時折立ち止まってはまた走ってついてくる。
さっさと諦めてしまえばいいものを、彼女は必死な顔をしてそれでも付いて来ることをやめなかった。
がしゃ、と音がしての足音が止んだ。

ちらりと振り返ってみると、どうやら足がもつれて盛大に転んだらしい。
膝から、つつ、と赤い血が流れているが、それにも構わずすぐに立ち上がってまた走ってくる。

バージルは心の中で小さく溜息をついた。


「座れ」
「…え?」
「座って、その血をどうにかしろ」


血の匂いに、雑魚が寄って来る。
が本当にずっと付いて来る気なら、その血が呼ぶ面倒事は避けたかった。
(面倒ならば斬り捨ててしまえば良かったのだ。最初にそう宣言していた通り)

は、はっと気付いたように膝の処置をし始めた。
置いていかれると思ったのか、慌てすぎていてその処置は随分と雑なものだった。


「付いて来たければ、」


自分の傷からこちらへ顔を上げて、黒い目がまっすぐに見返してくる。


「怪我をしたらすぐに治せ」
「…へ、」
「わかったら早くしろ。行くぞ」
「はい」


はまた焦って処置に戻った。
その口から小さく聞こえた言葉は無視しておくことにする。




(ありがとう)