「バージル、あなたがいくところならば、どこへでも」
捨てて行く筈だった女が言った。
その言葉に胸の内で小さく慄く。決してそれを外に出すことはしないけれども。
は、母親を失ってから今まで自分の生きてきた時間の中で、ほとんど唯一の"無駄"だった。
一体どうしてこんなにも長い時間を浪費してしまったのか。
それは今考えたとて答えは出ない。
解っているのは、このままでは腐る、ということだ。
穏やかなぬるま湯のような日常の中では、いつかきっと刀は錆び、自分の目指していたものは遠い記憶に薄れてなくなってしまう。
バージルはそれを望んではいなかった。
「どんな形でもいい、連れて行ってください」
はじめに立ち止まったのがいけなかった。
彼女の声に耳も貸さず、立ち去ってしまえば良かったのだ。
だが一度視線が絡まってしまえば、どうしてだかそれを振り払うことはできなかった。
「連れて、行って」
最後の言葉は震えて、殆ど声にすらなっていない。
今にも泣き出しそうな響きが、小さな棘として胸に突き刺さるような気分だった。
それが不快で不快で仕方が無い。
だがここで不快さを理由に背を向ければ、今度は本当に泣き出してしまうのだろう。
それを思うと胸の中にある石のような重さが増す気がして、踵を返すことが出来ない。
(不愉快極まりない。一体どうしろというのだ)
の目尻からはもう雫が零れ落ちてきそうだった。
それに手を伸ばしそうになり、拳を握る。
「少しでも足手まといだと思ったら、容赦なく斬り捨てる」
「はい」
「お前がたとえ瀕死の重傷を負っても、俺は何一つ関与しない」
「…はい」
「それでも来るか」
「連れて行って」
逆らうな。従え。そうしてもうひとつ。
鬱陶しいから涙は流すな。
泣かれるのは気分が悪い。
理由など
ただそれだけ