「あたしバージルのこの部分すき」


そう言って、はバージルの手首を指差した。正確には、はめている手袋と手首の境目を。
バージルがはめているのはフィンガーレスのショートグローブ。
甲を覆う部分が短くて、手首と甲の四分の一くらいが露出する格好になっている。
バージルは自分の手を見下ろしたが、一体どこがに気に入られたのか理解できなかった。


「…そうか」
「あとね、ここも」


突拍子なことを言うに何と反応したものか、曖昧に返すバージルのグローブから覗く指先を指して、彼女はまた楽しそうに言った。
は偶に、本当に偶にだが考えも付かないような妙な事を言ってバージルを困らせる。
これ以上おかしな事を言い出す前にと、バージルはブローブを外した。


「ああっ」


外した瞬間、の口から酷く残念そうな声が出た。そうして、すぐに外したグローブをバージルから奪い取ってまた無理矢理にはめようとする。
一体何なんだ、との手からグローブを取り上げると、不満を前面に押し出して口をへの字に歪ませた。


「外したら駄目なんだってば」
「何故だ」


だからー、と間延びした声を出してバージルの持つグローブを指差す。


「グローブからちょっと露出してるからいいんだよ」
「意味がわからん」
「バージルには分からなくていいよ。とにかくわたしはこの部分に、なんていうか…」


続く言葉を待って見ていると、そう、と思い出したようには手をぱちんを合わせた。


「色気とか、リビドーに近いものを感じる」


どきどきしちゃうんだよね等と言うに、バージル呆れと頭痛を感じた。
この娘は自分が何を言っているのか理解しているのだろうか。いや恐らく理解などしてはいまい。
大方どこかの安っぽい本やらを見て得た言葉を理解もせずに、ただ使ってみたかったから使っただけ、といったところだろう。

だからできればグローブ外さないでいて欲しいな、と言ってまた手を伸ばしてくるに、小さな悪戯心が顔を覗かせた。
その手を押し止めて、バージルはグローブを後ろに放り投げる。


「俺にはお前の感覚は理解できない、だが、」


から上がる抗議の声は無視して、その腰を捕らえて撫で上げ、その首元に舌を這わせた。
びくりと身体を震わせるの様子に口角が上がる。


「つまりはこういうことだろう」
「違うよ!」
「何が違う。この展開を望んでいたんだろうが」


違う違うと子供のように身を捩るの耳を甘く食む。
の顔も耳も、茹で上がったように赤く染まっていた。


「ついでに、俺はグローブは嫌いだ」
「…なんで」
「邪魔だろう」



お前に触れる時に。



低く囁くように言っての唇を親指でなぞる。
その顔からはもう湯気が上がってしまいそうだった。

だからお前も邪魔なものは取り去ってしまえと言わんばかりに、バージルはのボタンに手を掛けた。







シナリオ通りに進む午後とそれを享受させる柔らかい罠と











兄のあの手袋にときめくひとー。はい(挙手)

*リビドー:本来はラテン語で欲望の意。精神分析の用語で、性的衝動を発動させる力。また、すべての本能のエネルギーの本体。(by 広●苑)