実のところ、俺は、女は顔が全てだと思っておる。

そんな言葉を真剣な眼差しで吐き出したのは、の彼氏だ。
麦茶を啜りながら、はその言葉を呆然としながら聞いていた。
…人の好みをとやかく言うつもりはない。好みを述べるにあたり、性格を一番に引き合いに出す人も居るだろうし、やっぱり顔が全てだと言うひとも、胸が大きくないと駄目だと言うひとも、脚の美しさを重視するひとも、偏った年齢にのみ興奮を覚えるという人も、世の中いろんな人が居るのもちゃんとわかっている。それを否定することは出来ない。
だって、最初は幸村の尋常じゃない格好良さとその身体つきに惚れるところから入ったのだ。人のことは言えない。

だけど…幸村がまさか、顔を超重要視するような男だとは、思わなかった。


「そ、そっか…」


それしか言えなかった。
沈黙が流れて、ずず、と麦茶を啜る音だけが部屋の中に間抜けに響く。
暫く経ってから、なんだか腹立たしいような、悲しいような気持ちが湧き上がってきた。
は、そりゃあ自分がまったく見ることの出来ない程の超不細工とかでは無いとは思っているが…お世辞にも可愛いとか美人と呼べる部類で無いことも解っている。
すごく、普通の顔だ、と思う。顔が全てだという幸村が付き合うほどの女ではない、と確信を持って言える。


「…何を拗ねておる。が聞いてきたのだろう」
「や、まあそうなんだけどね…」
「俺は言うたぞ。今度はの番だ」
「うん…」


わたしの好きなタイプ…
考えながら、そういえば好きなタイプって何だろうと思った。そうだ、昔は優しくて包容力のある年上の男が好きだった。聡明で穏やかで、出来れば背の高い優しい男。
でも、今現時点をもってそれがのタイプかと言われると、疑問が残る。
タイプ。わたしの好きな男のタイプは…


「幸村…」


膝を抱えて、小さな声で言う。
考えても考えても、今は幸村以外の男が思いつかない。聡明じゃなくても優しくなくても穏やかじゃなくてもいいから、幸村がいい。


「なんだ?」
「だから、ゆきむら…」
「だから何がだ…?」
「幸村がいい、です」
「…」


膝に顔を埋めて、幸村の言葉を待つ。
暫く間があってから、今度は喉の奥で笑いを耐えているような音が聞こえた。
笑われてる。恥かしくて、悔しくて、むかつく。
顔を上げるのが嫌になって、さらにぎゅうと身を縮ませると、温かい身体が抱きしめてきた。


「案ずるな、。好みと現実とは別の話だ」
「む、むかつく…悪うございましたね、美人じゃなくて!」
「そう怒るな。俺が好いておるのはそなただ」
「ご機嫌取りすんな!」
「俺とて、付き合うとなれば以外には考えられぬ」


猫撫で声がそう言って、を宥めようとする。
ちくしょう、顔を上げてなるものかと思いつつ、顔が熱くなるのを止めることが出来ない。
、顔を見せてくれ」
と言われてちらりと顔を上げると、幸村は化粧が落ちていると言って笑った。



(090710)