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の恋人は、とんでもないサディストだ。 多分、このことはと、あと彼の往年の友人であるという猿飛さんしか知らないだろう。 いつもはよりも子供っぽい振る舞いをして天真爛漫な様子を見せているのに、スイッチが切り替わるように突然それが現れる。 「」 「やだよ」 やだよ、だなんてそんな言葉は抑止力にもならないことを知っていて、それでも言わずにはいられない。 拒絶された幸村は何ら反応も見せず、ただ微笑んで壁と腕の間にを捕えていた。 逃げ出そうと思えばすぐにでも出来そうなのに、何故かその腕の間から逃げることが出来ない。 「何て言われても、出かけるからね」 「何処へ」 「前から言ってたでしょ。友達と飲んでくるんだって」 「男も居るのだろう」 「そりゃ居るよ」 「ならば駄目だ」 この男は、サディスティックかつとんでもなく独占欲が強い。 普通の女ならば、この束縛に辟易してそろそろ別れても良さそうなものだけれども、生憎とそんな男に惚れ抜いているには出来ない。 幸村の腕が折れて、ゆっくりと彼が近付いて来る。 影になった幸村の顔に滴るような笑みが張り付いていて、胸がどきどきする。 正面から見つめることが出来なくて思わず顔を逸らすと、赤くなった耳朶を舐められる感触がした。 「ひゃ!」 素っ頓狂な声が出た。耳を押さえながら正面の男を睨みつけるも、彼はただにやりと笑うばかりで悪びれる様子もない。 「行くったら行くんだってば」 「行かせぬ」 「行く!」 押し問答に飽いて、幸村の胸をぐいと両手で押す。 全力で押しているつもりなのに、彼の身体はその場からぴくりとも動かない。 そのうちに、低く笑った幸村の手が、の両手をがっちりと捕えてしまった。 「は、な、せ!」 「断る」 掴まれた両手がぐいと引かれる。 触れる寸前まで近付いた唇が吐いた息が、くすぐったい。 「愛しておるぞ、」 「そっ、そんなこと言ったって騙されないよ」 「そなたの全てはとうに俺のものだ」 「傲慢!」 「真実であろう」 幸村の手は大きく力強く、の両手なんて右手ひとつで事足りる。 開いた幸村の左手が、するすると腰を擦った。 「ちょ、なにすんの!」 咄嗟の抵抗も虚しく、ばん、と音がする程強く壁に背を叩き付けられて、痛みに呻く。 その間にも幸村の手は止まる様子が無い。 「やだってば!」 「」 「痛いって!」 「良い子にしておれば痛いことはせぬ。だから」 大人しく従え。 低い、傲慢で理不尽な声が耳朶に叩き付けられる。 理不尽なことを言われているのに胸の奥がきゅうと締まって、身体から力が抜けてしまう。 ばくばくと心臓が煩く胸を叩いた。 ぎりぎりと締め上げる右手とは裏腹に、ぞっとするくらい優しい左手がの頭を撫でた。 さあ美味しい飴でもあげようか、とでも言い出しそうな優しい猫撫で声が、の髪に触れる唇から喉で笑う声と共に滑り出す。 「抗ったとて無駄なこと。そなたも重々分かっておろう」 「知らない…」 「毎夜俺が言って聞かせておるというのに忘れるとは」 「ばか、知らない!絶対行くからね、いつも幸村の思い通りになると思ったら大間違いなんだからね!」 どきどきと煩い心臓の音も、傲慢な言葉にきゅうとときめく胸も、全部認めたくなくてただ首を振る。 幸村はごく楽しそうに、優しい左手で首から背を撫で下ろした。 「やれやれ、無駄だと申しておるのに強情な」 耳の傍で、吐息と一緒に低くて甘い声が響く。 ずく、と腹の奥が熱くなった。 きっと真っ赤になっているであろう耳朶に、幸村の唇が触れてきた。 耳殻をぬるりと舐め上げられる感覚に、ぞわ、と背筋が震える。 はあ、と呆れたような焦れたような溜息が、彼の薄く開いた唇から漏れる。 無防備に油断していたの足の間を、幸村の膝が力ずくで割った。 「ならば嫌という程教えてやろうか、可愛いよ……なあ?」 この世で一番 無意味なこと (それは彼に逆らうことだわ) (090502/とあるボーカロイドの曲の歌詞にインスパイアされた) |