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は夫婦となって後も奔放で、自覚も無しにふらふらと辺りを魅了し飛び回る蝶のようであった。 今はまだ子供を抜けたばかりの青い実だから良いが、これがもう少し熟れた後まで今のように飛び回られては堪らない。 丁度良く、が可愛らしく嫉妬してきたのを、これは良い機会だと思い利用した。 今まで無条件に与えられてきたものが失われ、喪失感に怯え弱ったの心に追い討ちを掛け、 思い描いたとおり、は突如失われた幸村の腕に狼狽し、そして最後には必死になってすがりついてきた。 あまりにも素直に、幸村の思い通りに動いてくれたが愛おしく、知らず口の端が上がる。 そうして、姫に関しては恐ろしい程に狡猾な己に自嘲した。 外は既に明るく、柔らかな光が部屋の中を照らしている。 は未だ目覚めず、うつ伏せてすうすうと寝息を立てていた。 「朝餉の用意が調いました」 と、襖の外から声がかかる。その声にが小さく身じろいだ。 「まだ、良い」と返すと、呼びに来た小姓は少し驚いたのか「そう、でございますか」と困ったように言った。 「が未だ起きそうに無い。昨夜無理をさせた」 「…!」 ようやく意味を理解した小姓が、ではそのように伝えてまいります、と焦ったように部屋の前から離れていく。 はまだ、眠っていた。 その髪をどけて、項にそうと口付ける。離した唇を舐めると、かすかに汗の味がした。 「ん…」 閉じられた瞼が揺れる。うっすらと開いた目は未だ眠りの淵を彷徨っているようだ。 「起きたか」 「まだねてる…」 「そうか」 童のようにふにゃふにゃと、舌の回らぬ声がする。 頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を瞑る様子が猫のようだと思った。 何事かを呟きながら、ごそごそと動いてこちらへ寄って来ようとするが可愛らしくて、腕を回して抱き込んだ。 は満足そうな溜息をつき、腕の中に納まる。 これまでもこれからも、己はこの姫を大切に大切に、掌の上で慈しむだろう。 幼い彼女が赤く色づき花開くまで、その花が落ちて命が消えるまで。 掌中に握り込んで、他の者に攫われぬように。 「幸村」と眠たい声が幸せそうに己の名を呼んだ。 それを聞いて、ふと気付く。 ああ、もしかしたら掌中に握られておるのは己の方やも知れぬ。 我が運命は 君が掌中に在り (090224) |