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人物指定バトン【後輩幸村】でナチさんから!どうもありがとうございます! 電車ごっこ! 〜の場合〜 #01「あっ」 (電車待ちの列に【真田幸村】を発見!どうしますか?) 最近ちょっと気になるひとがいる。気になるっていっても、別に好きとかそういうこととは違う。 そのひとはのひとつ下の学年で、名前は確か真田幸村といった。 と彼の接点は、朝に乗る電車が一緒であるということ以外に何も無い。 真田幸村はいつも、電車の時刻ぎりぎりにやってくる。息を切らせて寝癖ではねた前髪もそのままに、ものすごい勢いで階段を駆け下りてくるのだ。そんなに人の多くない駅では、目立つことこの上ない。 最初の頃は、あの人何やってんだろ、と冷めた目で見つめていたのだが、近頃は何故か目が自然と彼を探すようになった。 電車の時刻まであと3分。ホームへ繋がる階段の方に目を遣ったが、彼がやってくる様子は無い。…いや、あった。来た。 今日は少し早めのご到着だ。いつものように3段飛ばしくらいの勢いで階段を駆け下りたりはせず、一段ずつ歩いて降りている。 少し寒そうにマフラーに顔を埋めている姿がなんだか可愛いらしく見える。 階段を降りきった真田幸村は、白い息を吐きながらこちらの列に向かって歩いてきた。 全力疾走していない彼はいつもよりちょっとだけ大人っぽく見える。 …とかなんとか思いながら観察していると、ふと、真田幸村が視線を上げてこちらを見た。 かちりと視線が合う。驚きで、一瞬息がつまる。彼も少し驚いたように目を見開いている。 (やばい、見過ぎた!) 咄嗟に、不自然な程に思い切り目を逸らしてしまった。まずい、これはあまりにも不自然すぎた。 変な人だって思われたらどうしよう! #02「かんべんして!」 (【真田幸村】が隣の席に!どうしますか?) なんてことだ。なんてことだ。 は頭を抱えたくなった。 朝の電車は、にとってささやかな居眠りの時間だった。だが、残念ながら今日はそんなことは出来そうにない。 (勘弁してよー…) ちらりと横目で隣を確認する。 の隣に座る同じ高校の学生服の男子…真田幸村は、鞄から何やら単語帳らしきものを出していた。 どうして今日に限って隣に座るはめになってしまったのだろう。 先に座ったのはで、真田幸村は後からやってきた。もう少し奥の席だって空いていた筈なのに、彼はよりによっての隣に座ってしまったのだった。 横目でちらちらと真田幸村の挙動を観察する。これじゃまるで不審者だ、と思いながらもやめられない。 幸い真田幸村はの視線に気付いていないようで、古文の単語帳を真剣に見つめている。 2年生は近々テストでもあるのだろうか。本来ならばここで単語帳を見ていなくてはならないのはの方なのだけれども、気にしない。 電車内で単語帳なんて開いても、どうせ寝てしまうだけなのだ。 (まつげ、長い) こんなに間近で真田幸村の顔を見るのは初めてだ。そういえば、同じクラスの子たちが真田幸村を見てきゃーきゃーと騒いでいたけれど、確かによくよく見ると相当格好良い。 いつも全力疾走乱れまくりの真田幸村しか見たことが無いからあまり感じたことがなかった。 ごそ、と真田幸村が席に座りなおした。 これ以上見つめていたら気付かれてしまうかもしれないと思い、も視線を前へ戻した。 もうちょっと、見ていたかったけど。 …うん、もうちょっとだけ見ていよう。横目だけで見ていれば、きっとばれない。 #03「寝顔、かわいい」 (【真田幸村】が眠ってしまいました。どうしますか?) 隣からなんだか健やかな寝息が聞こえてきたのは、それから5分も経っていない頃だった。 ちらと横目で確認すると、真田幸村がマフラーに顔を埋めながら目を閉じている。 どうやら寝てしまったようだ。速攻すぎる。と匹敵するほど早い。 真田幸村が寝ていることをいいことに、今度はちょっとだけ大胆にその顔を覗きこむ。 ぴくりと彼の睫が動いて(やばっ)と一瞬焦ったが、目覚める様子は無い。 真田幸村の膝の上にある単語帳が、ずるりと滑り落ちかかっていた。 気付かれないようにそうっと手を伸ばし、単語帳を元の場所に戻してやる。 夢でも見ているのだろうか。 真田幸村の瞼はやっぱり震えていた。 #04「くっつかないで!」 (爆睡中の【真田幸村】が突然あなたに寄り掛かってきました!どうしますか?) とん、と肩に圧力を感じたのは、丁度がうとうととし始めた時。 眠りを邪魔されて眉を顰めながら圧力の正体を確認して、唖然とする。 圧力の正体は、眠りこける真田幸村だった。 彼はすうすうと寝息を立てながらの方に寄りかかってきている。 (ええええ!) この展開は予想していなかった。 突然の出来事に眠気が吹っ飛び、身体がかちんと固まる。ど、どうする、自分。 多分、少しでも身じろげば真田幸村は目を覚ますだろう。 でもこんなに気持ち良さそうに眠っているのに、起こすのはちょっと悪い気がする。 というかこの状態で起こした場合、その後の気まずさを考えると…起こせない。 寄りかかる真田幸村を見る。 マフラーから覗いた口が、薄く開いていた。 ぐ、と身体にかかる重さが増した。そ、そんなにくっつかないで!と叫びたいけどそんなことは出来ない。 心臓がどきどき鳴っている。触れ合った肩があつい。 うう、どうしようどうしよう! #05「ああ…」 (もうすぐあなたの降りる駅。どうしますか?) そうこうしている内に、降りる駅が近付いてしまった。 電車の速度が落ち、周りの皆が降りるための準備を始めて、周囲が俄かに騒がしくなる。 …だというのに、真田幸村ときたら全く目覚める様子を見せない。 相変わらずの肩口に寄りかかったまま寝息をたてている。 もしもーし、とごく小さな声で呼びかけてみたが、起きる気配は無い。 婆娑羅高校前〜婆娑羅高校前〜と、間の抜けたアナウンスとともに、とうとう電車のドアが開いた。 真田幸村は目を覚まさない。 ちょっとちょっと勘弁してよ! 「あの、すみません」 ぺしぺしと真田幸村の腕を叩く。ぞろぞろと、同じ電車に乗っていた生徒が降りていく。 真田幸村はまだ起きない。 ああもう駄目だ、このまま無理にでも真田幸村から離れて降りよう、支えを失えば流石の彼も起きるはず。 そう思い、鞄を手にした次の瞬間。 がしっ。 と、彼を叩いていた手を掴まれた。 えええっ!と心の中で激しい突っ込みを入れながら、手を振り解こうとするもがっしりと強く掴まれていてどうにもならない。 真田幸村、ほんとは起きてんじゃないの!?と本気で焦りながら「起きて!そしてはなして」と声をかけると、真田幸村が僅かに身じろいだ。 「ん……も、すこし、だけ」 「いやいや!」 「……」 突然に名前を呼ばれて、驚きに身体が固まる。 え、え、なんで、名前…(しかも呼び捨て) 突然呼ばれた自分の名前に動揺しながら真田幸村の顔を見つめるを無視して、無情なるアナウンスが響く。『ドアが閉まります。ご注意ください』 ぷしゅーと小気味良い音をたててドアが閉まり、電車にはと真田幸村と数人の乗客だけが残された。 真田幸村は目を覚まさない。握られた手も、離れない。 呆然とするを他所に、電車がゆっくりと走り始めた。 #06「もうちょっと繋いでてもよかったのに」 (終着駅に到着しても起きない【真田幸村】をどうしますか?) (やっとお目覚めの【真田幸村】、ちょっと寝ぼけている様子。どうしますか?) どうせどっちにしろもう遅刻だし。 こうなったらいつ真田幸村が目を覚ますのか見てやろうと、半分投げ槍な気持ちで電車に揺られる。 相変わらず、真田幸村はの手を握ったままだ。 同じ車両に乗っている乗客が、こちらのほうをじいと見ているのに気が付き、急に恥かしさが込み上げてきた。 がらがらになった電車に隣同士で座り、手まで繋いで寄り添っているのだから。 これではまるで、恋人同士が学校さぼっちゃいましたみたいな構図ではないか。 さっきまでは「ついてない…なにやってんだろ自分…」という気持ちしかなかったのだけれど、これはちょっとどきどきしてしまう状況だ。 真田幸村の頭が大分こっちに傾いてきている。近くで見てみると、割と硬そうな髪だ。犬の毛みたい。 手を伸ばして触ってみたい衝動に駆られたが、それはどうなの、という理性がを押し留めた。 握った手が、少しだけ汗ばんできている。 結局その後も真田幸村が目覚めることはなく、とうとう終点にまで来てしまった。とはいっても2駅ほどしか離れていないのだけれど。 流石に起こさなきゃとなんないなあと思いながら、真田幸村の肩を揺する。 「真田君、終点だよ」 真田幸村の耳の近くで、なるべく大きな声を出す。 すると彼が身じろいで、ようやく、ようやくその瞼が開いた。 少し寝惚けた様子の彼は、まず周りを見回し、そしてわたしの姿を確認して、 「な……っ、何故!?」 と素っ頓狂な声を上げながら、思い切り手を振り解いた。 なにゆえってそんな、それはこっちの台詞だよ! #07「幸村君」 (平謝りの【真田幸村】。お詫びになんでもしてくれるって!どうしますか?) 「申し訳ございませぬ!」 焦げ茶の頭が、の目の前で勢い良く下げられた。 電車を降りてからずっとこの調子だ。もういいよ、と声をかけても真田幸村の謝罪の嵐が止まらない。 「その、俺はとても寝起きが悪く…眠るつもりは無かったのですが、つい」 「うん、寝起きの悪さはよくわかったよ」 「すみませぬ…」 肩を落としてしょげる姿が、叱られた犬みたいだと思う。 「お詫びにもなりませぬが、某に出来ることならば何でも致します!」 「や、いいです」 「しかしそれでは某の気が治まりませぬ!どうか!」 「えー…」 何でも言うことを聞く!と身を乗り出す真田幸村に気圧されて、すこしだけ背を反らせる。 これは、彼の言うとおり何かしらのお願いをしないと終わらないだろう。 「じゃあ、えーっと…」 「はい!」 「幸村君って、呼んでいい?」 そう言った後の真田幸村の顔、目を大きく開け口を半開きにした間抜け極まりない顔は、傑作だった。 #08「え?」 (もうすぐ【真田幸村】とお別れです。最後に【真田幸村】に一言。) もれなく遅刻となってしまったわたしと幸村君だが、気分はなんだか晴れやかだった。 ここまで焦らない遅刻も珍しい。きっと先生方には怒られるし、クラスの人たちにも色々言われるだろうけれども、それでも遅刻して良かったって思えるだろう。ずっと気になっていた男の子と、こうして話すことが出来たのだから。 幸村君は、思ったよりもずっと気さくでいい人だった。 可愛い後輩が出来たことがなんだか嬉しくて、顔が緩む。 幸村君と仲良く遅刻したなんてことが知れたら、普段幸村君にぎゃーぎゃー言ってる友人達は何て言うだろう。 ちょっぴり優越感。 校門に向かって歩きながら、そういえば、と幸村君に話しかける。 「幸村君はさ、なんでわたしの名前知ってたの?」 「え?」 「寝惚けて呼んだんだよ、って」 途端に、幸村君が酷く焦り始めた。いや、それはその、とかなんとか言いながら視線を泳がせている。 そういう反応はやめてほしい。なんだかこっちが照れるではないか。 挙動不審に陥る幸村君に、照れ隠しのつもりで「もしかして前からわたしに惚れてたとか?」と笑いかける。 違いますよハハハ!えーなんだぁつまんないの!なあんてやり取りで場が和めばいいなーという期待をしながら。 けれど、幸村君はよりにもよってこのタイミングで、とんでもない反応を見せてくれた。 「あ……」 彼の顔がみるみる内に赤くなる。 口が戦慄き、耳まで真っ赤にしながら幸村君は足を止めてしまった。 つられても足を止める。 があ、と自分の顔が熱くなったのを感じた。 …ち、ちょっと、あの……え? ほんとに? (081213) |