男だから仕方がない。





case1:前田慶次



「おい、あれ」

放課後下校時。後ろから聞こえた話し声に顔を上げると、前方約10mにの姿が見えた。
後ろを歩く男二人がこそこそと指し示す先で、が携帯を弄りながらフェンスに寄りかかっている。
指を指される原因を認めて、慶次はため息をついた。
肩にかけている鞄にひっかかって、スカートがめくれている。不幸中の幸いというかなんというか、かろうじてギリギリ中は見えないが非常に危険な状態だった。
が鞄を肩にかけなおして、さらにスカートが上に上がった。本当にぎりぎりだ。絶景。…いや、そうじゃなくて。
後ろを歩く二人組みの男が「お」と小さく声を上げる。は全く気が付いていない。「あと2cm!」と、からかうような会話にむっとした。

(……)

ずかずかと足早にの方へと歩み寄る。
」と声をかけながら、鞄をくいと引っ張った。
すとん、とスカートが重力に従って落ちる。よし。

「あれ、慶次。どうしたの?」
、今日暇?」
「暇になった。友達と約束してたんだけど用事できちゃったんだって。今メール来た」
「そっか。じゃあ俺と一緒にどっか行かない?」

はちょっと迷っている。「幸村から、ケーキの美味しい店教えてもらったんだけど」と言うと、途端に笑顔になって「行く!」と頷いた。
じゃあ行こう、と手を繋いだら、は照れくさそうにすこしだけ抗った。

後ろをちらっと見ると、あの二人組みの男が「やっべえ」っていう顔をしていた。
悪いけど、見せてやらないよ。俺だってまだ見てないんだから。










case2:伊達政宗



「おい、見えてるぞ」

ベッドの上でうつ伏せになりながら、足をぶらつかせて漫画を読みふけるに声をかけた。
普通ならば自分の体勢から考えて何が見えているのか気付くのだろうが、残念ながらちょっと頭の弱いあいつはそれだけでは気付かなかったようだ。
足をばたばたさせているためか、制服のスカートがめくれている。
自分の状況に気付かないは「なにがー」と生返事をしながらページをめくっている。(あいつ、ひとの買った本ばっかり当てにしやがって。たまにはテメェが買いやがれ)
ごろ、と体勢を入れ替え仰向けになったときに、薄いピンク色の布が見えた。

「おい」
「んー」

相変わらず生返事のに呆れて、ベッドの上に乗り上げる。
流石のも、本で口元を覆いながら「なによ」とこちらを見上げる。

「見えてるって言ってんだろうが」

そう言って、スカートの端を掴んで思い切りめくり上げた。
沈黙の数秒間の後、の顔がどんどん赤くなり、唇が震え始める。

「ま、ま、政宗…あんた…!」
「なんだ、見て欲しくてやってたんじゃねえのか」
「何の話よ!ちょっと、手、はなしな、さ、い、よ!!」

スカートを戻そうと、が抗う。さっきまで見せっぱなしだった癖に、顔を赤くして膝を閉じ、足を折り曲げ必死に隠そうとするを見ていると、自分が無理矢理に乱暴しようとしているような気分になってきた。
(…)
ぐい、とさらに引っ張ると、が泣きそうに眉を顰めて「い、いやー!」と身を捩った。
(……)

「…、相談なんだが」
「は、な、せー!!馬鹿政宗!はなせ!」
「犯してえ」
「………!?」










case3:猿飛佐助



徒歩で学校に来ているに合わせて、自転車を押す。
本当は俺だけ自転車で先に帰ってもいいんだけどそれはしない。

高校の3年目、春のクラス分けでと初めてクラスが離れた。小学校の頃からずっと一緒だったから意識していなかったが、最近、のいないクラスはあまり面白くないということに気付いた。
周りからは「腐れ縁もとうとうここまでだな」と言われた。俺は冗談混じりに「ほんと、やっとだよ」とか返した。所詮はただのクラス分け、俺ととの間は何も変わらないって思ってたけど、お互いに違う知り合いが増え、何をしているのか分からない時間が増え、毎日会っていた筈なのにその機会が激減した。

家が近くとはいえ、朝は俺の方が早いし、帰りはのほうが遅い。「佐助、久し振り!」だなんて、そんな言葉を聞くことになるなんて思わなかった。毎日簡単に会えると思っていた幼馴染だったのに。

かんかん、という音がして、前方の遮断機が下りる。はちょっと走ろうとしたけれども、俺が動かないから踏み切りを渡ることを諦めたみたいだ。いいよそんなに急がなくて。せっかく久し振りに会えたんだから。


がたんがたんと大きな音をさせて目の前を電車が走り去る。
強い風が吹いて、の髪がぶわっと散った。ついでに、のスカートもふわっと風を受けて広がった。
慌ててがスカートを押さえた。けど、残念だったね、もう見えた。

「…みた?」
「何が?」
「なんでもない」

赤く点滅するランプが消えて、ゆっくりと遮断機が昇り始める。

「苺柄」
「…な!」
「俺様もうちょっと色気のあるほうが好み」
「やっぱり見てたんじゃない!」

が、持っていた鞄で思い切り背を叩いてきた。いてえ。
「佐助に見せるために履いてんじゃないの!ばっかじゃないの!えろ本でも見てろ!」
捨て台詞と共に、が走って踏み切りを渡る。「ばか佐助!」という罵声も、久し振りに聞くとなんだか気持ち良い。(あれ、俺様マゾ?)

自転車に乗り、ペダルを漕ぐ。
いつかと随分変わってしまった、その背中に追いつくために。














(080625)