ちがうんだよ
あの頃とは、




眠れなかった。一睡も出来なかった。
一足先にもそもそとベッドから出て行ったの気配を感じながら、狸寝入りを続ける。
ぱたん、と部屋のドアが閉まったのを確認して、佐助はため息をついた。
あの鈍感娘、お得意のホットパンツとタンクトップという最悪の組み合わせで、枕を抱きかかえて「一緒に寝て」と上目遣い。一体どこでそんな手管を覚えたのかと頭をかかえたくなったが、あれは佐助を信用しきっているが故の行為であって、他になんの意図もないのだろう。

が寝返りをうつたびに触れる足だとか、かすかに聞こえる呻き声だとか、捲れ上がるタンクトップとか…その他諸々のおかげで、眠れなかった。そんな佐助を尻目に爆睡しているを見て苛立ち、こいつ犯してやろうかとすら思った。(そんなこと出来るわけないんだけど)

さらにそれだけでなく、すこしだけ、とその細い身体を抱きしめてやると、

「佐助大好き」

などと心臓が飛び出そうなことをのたまった。
そのままこちらの気持ちを知ってか知らずか身体を摺り寄せるに、これはもう覚悟を決めてしまおうかとも思った。柔らかい身体に、下半身は素直に反応した。…知られなくて良かったと本気で思った。

昔は、こうしていつも一緒に寝ていた。あの頃からのことが好きだったはずなのだが、その時はこんな邪な気持ちを抱いたりはしなかった。


(くそ…)


いっそのこと、一歩を踏み出してしまおうか。自分のこの気持ちを伝えたら、はどんな顔をするだろう。
最悪、もう二度と口も利いてくれなくなるかもしれない。
それならばそれでいい。この報われない恋に終止符を打ってくれるというのならば、それで。
どうせ、あの半年もすれば受験、大学に進学してこの家ともおさらばだ。離れていれば、そのうちほとぼりも冷めて、今度こそ本当に家族になれるかもしれない。








…という佐助の心の内も知らず、制服姿に着替えたが最初に放った一言は
「また怖くなったときとか一緒に寝てもいい?」
だった。この血の繋がらない妹は、実は悪魔なんじゃないだろうか。
俺様がこんなにも思い悩んでいるってのに、こいつは!本当に怖いのは居もしない幽霊なんかじゃなくて、お前を狙っている俺なんだよ。



「別にいいけどさ」

「ほんと?やった!」

「でも」

「?」



にこにこと笑みを浮かべながら、ぽへーと間抜け面でこちらを見つめるの肩を掴む。
そのままぐいと引き寄せて、ちゅうと唇を吸ってやった。
驚きに表情を無くしたの目を至近距離から見つめながら、キスしたせいで自分の唇についてしまったグロスを舐め取る。甘い。



「次来たら、もっと先のことするから」



その場に突っ立ったままのを放って、玄関に向かう。ダイニングからの「佐助朝ごはんはー」という問いに「俺今日早く学校行かなきゃなんないからいらないわ」と答え、靴を履いた。
はまだ、その場に立ったままだ。

ああくそ、もうどうにでもなれ!








(080509)