|
すこし前までできたこと
すこし前までできたこと すこし前までできたこと。 全力のプロレスごっこ。一緒の柔軟体操。目の前での着替え(…これはけっこう前から駄目だった)、それから…… 「駄目」 お願い、と目の前で手を合わせたの前で、腕を組みながら佐助は首を振った。 「なんで!」と必死に懇願してはみたものの、返ってくる答えはやっぱりNO。 「餓鬼じゃないんだから」 「だってー!」 「独りで寝れなくなるってわかってて見たが悪いの。自業自得!」 分かったらとっとと自分の部屋に戻る!と佐助はの部屋のほうを指差した。 怖い映画を見た。毎週金曜のロードショーを欠かさず見ているであったが、流石に今夜の映画は見ないほうが良いかもしれないと思った。外国のホラー映画は平気だが、ジャパニーズホラーは苦手なのだ。見たらきっと夜怖くて眠れなくなるに違いない。そう分かっていて、でも結局見てしまった。 今更見てしまった事実を取り消すことも、記憶に残る怖いあの場面を忘れることも出来ない。ひとりで部屋にいることすら怖くて、枕を抱きかかえながらこうして佐助のところへ来てしまった。 「昔は怖い夢見た時とか一緒に寝てくれたじゃん」 「いま幾つ」 「お願いお願いー!寝相よくしとくから」 「どうやって良くすんの」 駄目ったら駄目!はい、戻った戻った。俺様眠いの。 そういって、しっしっと手をやる佐助。だが、そう簡単に引き下がるではない。 「ちょ、馬鹿!」 「いーれーて!」 隙をついて、無理矢理に佐助の布団に潜り込んだ。ぼすんと枕を置いて布団を握りこんでしまえば佐助も諦めるしかないだろう。佐助は唖然として暫くこちらを見つめていたが、盛大なため息をついて最後にはそれを了承した。 「いつ以来だろうね、一緒に寝るの!」 「はやく寝てよもー…」 もそもそと何度も寝返りを打っていると、しまいには枕で顔を押さえつけられ「寝ろ!」と怒られた。 仕方なく動くのはやめて黙って天井を見つめていたが、心臓がばくばくと高鳴って眠れそうに無い。 嬉しくてはしゃいでしまったが、家族とはいえ、血の繋がらない男女が同じベッドで寝ているこの状況は、あんまりよくないんじゃないかな、と思えてきた。ああそうか、だから佐助はあんなに拒否したんだ。 隣で佐助の寝息が聞こえる。心臓がどきどきする。寝られない、眠れるわけない。 …と思っていたのだが、気が付けば眠ってしまっていた。目を開けると、目の前には佐助。ああ、佐助に抱きしめられているのだと、寝惚けた頭で理解した。幸せだ。この腕は、いつだってを優しく包んでくれる。彼氏なんていらない。恋人なんて作らなくていい。佐助がいればいい。 佐助、好き、大好き、一番好き、世界中の誰よりも佐助のことが好き。 幸せのなか、怖い映画のこともなにもかも忘れて、はまた目を閉じた。 (080509) |